とある理物民のクリスマスーみなさん、クリスマスはどうお過ごしの予定ですか?

はじめに

クレイです!

hepthを目指す人って名乗ってるくせに怠慢すぎる日々を過ごしています。 年末だからセンチな気分になったからでしょうか。何も進捗がない自分の姿を見て虚無になることもあります。 そんな気分のせいで全く勉強に手がつかなくなって、さらに進捗が生まれなくなる、、、負のスパイラルですね。

本当は12/13理物アドベントカレンダーにもう1本、超対称性に関する記事を書くことになっていて、 自ら担当に登録しておくと勉強のモチベができるだろうという想定だったのですが、すでにやばいくらい遅刻しているし、引き延ばして本記事(12/24)の後にぼちぼち書くことにしようと思います。年中には書きます、すみません、、、、、

一つ言い訳をすると、学生実験ガチャで特に厳しいかつ要領がつかめない種目に当たってしまい、11月末から1か月くらい病んでいました。自分がどれだけ実験に向いてない(そして実験が嫌いな)性格なのか、つくづくと感じることができた時間でした。 それに、クリスマスは大好きな彼女と一緒に過ごす予定が立っているので、人生初のクリスマスデートを実験なんかで疲弊した精神で迎えることになるのが何よりも心配でした。 何日も徹夜を続け頑張った結果、幸いクリスマス3日前に試問を含めて無事実験終了できましたが、彼女には多大な心配をかけてしまって、申し訳ないところです。

おっと、うっかりしてもう惚気てしまいましたね。 つまりそういうことです。せっかくクリスマスイブなので、恋愛をテーマとして語らせていただきたいな、と思います。 もちろんそれを口実に思いっきり惚気ることがメインですが。

理物の恋愛事情

僕の所属、東京大学理学物理学科、略して理物には毎年70人前後の学生が進学します。そのうち恋人がいる人の割合ってどのくらいなのでしょうか? 特にコロナによりゼミと実験日以外は登校しない学生もいるので、全員を調査するすべもなければ、僕は足が広い人ではなく噂などには疎くて見積りも立たないので僕がそれを言うのは信憑性に欠けているかもしれませんが、知っている範囲内で書いてみます。

まず東大生はイカ東ばかりで、理物には特にそういう人しかいないという印象はありますね。 こう言ってる僕もイカ東ですし、うちの代の理物民にもその類の人が一定数いるのは事実です。 でもイカ東だからといって恋人ができないこともないですよね。東大生であるだけでモテるし(笑) まあその話はさておき、恋人がいそうな人はキラキラ大学性格を満喫していて学校にあまり来ない可能性もあるから、学科の恋愛率が低いのはバイアスがかかっているかもしれませんね。

某理物民によると、共学出身は意外と恋人いそうという仮定をして概算すると、約3割は恋愛していることになるらしいです。本当か?とは思ってしまいますがね。全部偏見による推定だから、ちゃんとしたデータがほしいところです。

一個上の代からすると、うちの代は(イカ東目線から)陽キャ多めで、物理知識でマウントを取ってくるヤクザは少なく、全体的に安穏らしいです。僕もそれには同意です。見た目も性格も知識も明らかに僕よりモテそうな人も結構いるんです。その人たちも恋人作ろうとすれば無難に作れると思いますが、、

そういえば、いくつ上かは忘れましたが上の代では「理物の3年生は夏休み中、突然恋人ができる」という話もあるらしいです。僕も今年の夏休みに彼女ができたので、ちょうど当てはまるケースですね。 コロナ禍を考慮して3割まではいかなくても5人くらいは恋人できてるんじゃないかな、と少し楽しみにしていたのですが、5人もいたかはともかく、彼女ができたって自分から惚気てくるやつはどうやら僕だけだったようです。おかげて僕には「すぐ惚気てくる人」というタイトルがついてしまい、煽られ半分でこのように惚気記事を書かされる羽目になったわけです。笑

ちなみに理物の男女比は約10:1です。だからと言って女子学生が姫になることはありません。 みんな課題で忙殺されるので、そんなくだらないことをしている暇なんかないのです。女子も女子で男に負けないくらいのイカ東だったり学科に関わりを持たなかったりします。 要は、学科内でイイカンジになることはめったにないということです。全くないとは言えませんが。

彼女について

僕が彼女と出会ったのは6月末で、1か月間連絡を取り続けました。 ちょうど夏学期の試験(&レポート)期間だったので会う機会は少なかったのですが、お互い忙しいところを応援し合い、それを口実でラインを送っていました。 最初から気さくに近づいてくる彼女の性格が気になり始めたのですが、話が進むと彼女はとても真面目で知的な人で、話のピントも合うし、性格面で共通点もたくさんあるし、あっという間に好きになってきました。

彼女は見た目も本当にかわいいのですが、それを褒めてしまったらかえって悪く思われるか勘違いしていました。だから言葉は控えていたのですが、なんか付き合いたい気持ちはすごくあってもどう伝えればいいかわからなくて、不器用すぎた僕は「(彼女の名前)ちゃんも彼氏作ってみたら?」と送ってしまったこともあります。

いよいよ夏休みが始まったところで2回程度デートして、上野公園のさくらテラスで告白しました。セリフは地味に「好きです、付き合ってください」系のアレンジにしました。彼女は返事の代わりに近づいてきて、気づいたら僕は抱きしめられていました。最小30分は二人でそのままいた気がします。 後日の話ですが、彼女曰く、話が合うのはもちろんだけど顔がドタイプで、でも僕から見た目を褒めてくれないし恋愛の話も振ってこないから、恋愛には興味がない人だと思っていたそうです。1 そこは完全にやらかしてしまったのですが、まあこうやって付き合い始めて、今もラブラブ続けているわけです。ありふれた恋バナですね。

彼女の専攻は生物系で、選択科目として統計も取っています。専攻が一致してなくて互いの学業の話は皮相的なところしかできないのは残念ですが、分野は違っても応援し合って癒し合えるところは本当に相性がいいです。 あと頭がいいです。僕はずっとかっこいい系のリケジョがタイプだったので、ぴったりな相手だと思います。

付き合ってから分かったのですが、彼女は顔以上に仕草がめちゃくちゃかわいいです。 甘えてくるときはまるでわんこちゃんみたいにはしゃいできます。うさちゃんみたいにぴょんぴょんすることもあります。でもにゃーんって鳴きます。どっちだよ笑笑って思いながらも、着実に心臓に有効打をくらっています。 そんな彼女が勉強に集中するときは真面目でかっこいいんです。これがインテリ女性かっていうオーラを発散してくるし、課題のプレゼン資料も着々とこなしています。ギャップある彼女、もう最高ですね。

そうだ、コロナワクチンの2回目接種の翌日、判断ミスで食料を買ってくることを忘れて、 40度の高熱で水を飲んでも喉の渇きが続いたり、普通に空腹感が耐えられなくなって大変だったのですが、 彼女が買い物して家までお見舞いに来てくれて、おかげで命を助かったことがあります。一生忘れられません。

恋愛について

恋愛というのは本当に人それぞれですし、いうて僕も人生初の恋愛でまだ5か月弱しか経ってないです。 だから調子乗って偉そうなことを言うつもりではありませんが、それでも恋愛を始めてから気づいた点を述べていきたいと思います。

まず、忙しい理系大学生が恋愛をするためにはタイムマネジメントが大事という点ですね。 僕は今まで恋愛経験がなかったので、大学時代に恋愛をしてみたいという漠然とした憧れはありました。 いざ付き合ってみると、サークルをもう1個入ったようなタイムロスが発生するので、学業、特にカリキュラム以外にも何か勉強したいことがある理物民の場合はそれと両立できるかをしっかり見極めつつ覚悟を決めた方がいいし、さらにそれに必要なタイムマネジメント力をつけておくべきだと思います。

これはまあ、負担とか面倒くさいというより、お互い好きすぎてもっと触れたいという気持ちが強いから仕方ないものだと思いますね。実際、何もない日でも毎日50件はライン往復してますし、ハートとスタンプの使用頻度も異常だし、やってるとあれ僕こんなにラブラブなところあったっけ?って自分でもびっくりします。

それを踏まえつつ、どうやってスマートに管理して交際していくかを考えなければなりません。 僕の場合、彼女と会うのも週1~2日です。秋学期の後半以降って金曜日午後からは空いているので、週末は3日あるわけですが、課題もそこそこあるので1日くらいは会わないでタスクをやります。それでももっと時間がほしいときは必ずあります。 そういうとき片方は会えなくて寂しい、片方はただでさえ忙しいのになんか病んでる、とどちらもネガティブに考えてしまうと喧嘩になることは明らかだし、自分自身はそれでも相手を好きでいられるかも真面目に考えることになるかもしれません。 ちょうど彼女も実験実習で忙しく、お互いタスクを消化する時間がほしいから、忙しいときは勉強デートを増やすことにしました。タイムロスを減らしながらも、疲れたら相手の肩に寄っかかってきて癒されればいい。割と都合のいいデートプランですね。ただ、それでも大丈夫な彼女と付き合えてたのは運の良さと思います。

まっとうで良い人同士で恋愛しても、別人である以上合わない部分は必ずあるわけです。 昔の僕をそうでしたし恋愛経験がない人は恋愛自体に憧れがちですが、タイプの人を想像する以外にも、どのような相手との恋愛が自分とスムーズに行きそうなのかも考えておくといいでしょう。 時間で言えば、同じ程度に忙しいかどうか、もしくは自分が忙しいことを理解してもらえるかどうか、どれくらい会わなかったら寂しくなるかなどは結構重要な基準ですね。なんなら一緒に勉強デートができると上手くいくかもしれません。毎回勉強デートしていいという意味ではないです。一緒に遊んで幸せな思い出を作ることも大事ですし、相手のことが好きなら一緒にやりたいことも生えてきますから。

恋愛をして気づいたもう1つの点は、いくら自分の価値観を尊重してくれる相手だとしても、恋人がいない自分の価値観といる自分の価値観は必然的に違って。相手が大切すぎるから、一緒に過ごす未来を描いていきたくなります。 僕だって、アカデミックでの清貧な生活も悪くないかなーってなんとなく思っていたのですが、(アカデミックで生き残るハードルの高さを実感したのと相まって)彼女との未来のためには頭の中お花畑ではいられないなと感じ始めて、最近は経済的な側面も踏まえて進路を見直しています。もう軽いノリで大学院留学とか言えなくなりました。 悩みの末、やはりアカデミックを目指す、もしくは就職する、どちらになるかは分かりませんが、彼女の存在自体が価値観を揺さぶる大きい要因になりました。恋愛が自分を見直すいい機会になることは間違いないようですね。

クリスマスの過ごし方

割と真剣な話ばかりしたので、切り替えて明るい話をしてみましょう。今日はクリスマスイブです。

クリスマスと言うとやはりカップルの最大記念日ですよね。 彼女の誕生日にディズニーデートに行ったことがあるので、記念日の企画は順調に進んでいます。

イブはまず、美味しい昼ごはんから。展示会に行ったあとはぶらぶら散歩しながら東京駅周辺のイルミネーションを鑑賞する、いい雰囲気になったところでちょっと贅沢なグリルディナーを予約しています。

クリスマス当日は、アクアリウムに行ったあとは、週末だしどちらもややインドアなので、家でちょっとしたパーティーをする予定です。 いつものお家デートのようなドラマ鑑賞に軽食を添えるだけです。最近はネトフリの韓ドラにハマっていて、SKYキャッスルという上流層の受験戦争ドラマを観ています。 あとは、お家に来てもらったし、そのまま26日まで一緒に過ごそうと思います。

この記事を書いてる時点でもう楽しみでたまりません。あ、そうだ、クリスマスカード書かなきゃ。

さいごに

カップルなら普通にやってることをいちいち書いてみましたが、いかがだったでしょうか? カップル自体は何人でもいるとしても、僕個人とつながっている恋人という存在は特別で、自分が特別であることを認めてもらいたいと同じ心理で恋人と幸せに過ごしていると惚気たくなるのだと思います。僕の場合はそうですね。だから失礼ながらいっぱい惚気させていただきました。

とは言ってもただの惚気ですが、いやだからこそ、多くの方にたくさん読んでいただけると嬉しいですね。 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。 駆け足で書いた記事なので文章がおかしいところがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

では、メリークリスマス。みなさん良いお年をお迎えください。


  1. 客観的に見て僕はイケメンではありません。

Physics Lab.2022 幾何班紹介 (Advent Calendar)

はじめに

こんにちは、物理学科3年のクレイ(粘土)と申します。

Physics Lab.2022では「幾何班」の班長を務めさせていただいています。 アドベントカレンダーの形式を借りて、この記事では幾何班の活動を紹介していきたいと思います。

幾何班とは?

幾何学について

本班ではシンプレクティック幾何学をはじめ、微分幾何学位相幾何学Lie群などを扱う予定です。 よく「幾何学」というと、中高数学に出るような平面図形や作図、あるいはテセレーションを想像すると思いますが、私たちはそういうことはしません。 とは言っておきましたが、せっかくなので今挙げた「幾何学」の分野がどのように「中高数学の幾何学」と関連しているかを見ていきましょう。

中高数学の幾何学は、ユークリッド空間、つまり平坦な座標系が取れる空間での図形を扱います。ここで平坦な座標系というのは、各点での軸方向が正規直交していて、またベクトルを平行移動させたときに成分がそのまま移るなど、都合のいい性質を持っています。

しかし、同じ2次元でも平面ではなく球面だったらどうでしょうか?ベクトルの平行移動が移動した径路に依存するなど、ユークリッド空間の性質が成り立たなくなってしまいます。球面のような曲面を上では、平行移動を含め、ベクトル解析の勾配・発散・回転などの演算をまた新しく定義しなければならなくなります。つまりユークリッド幾何学より一般的な状況に適用できる幾何学が要求されるわけです。 そしてもう一つ、曲面上で幾何学をするには、その曲面が3次元空間に置かれていることを意識してもあまり役に立ちません。1 むしろその曲面に住んでいるアリになって「局所的には2次元平面で、平行移動や長さなどが点ごと異なる」という内部的な態度をとることで曲面の記述が簡単になります。それが微分幾何の始まりです。

幾何学をひとまとめに言うと、図形の「」を扱う学問です。形というのは、解釈の仕方にもよりますが、基本的には見方やものさしによらない性質を指します。

微分幾何学の目標の一つは、幾何学(中でも特に局所的な部分)を、座標系に依存しない形で記述することです。 座標をまったく使わないという方法でもいいし、やむを得ず座標系を入れるとしても、座標系の取り方を替えても適切な変換則を与えて片方の記述を変換したものがもう片方の記述と一致するならば、そうやって直交座標だけでなく、斜交座標系だったり、曲がっていたりしても適用できるように一般的な座標系での記述を与えることができればokです。

幾何学のもう1つの分野はトポロジー(位相幾何学)です。トポロジーは局所的な各部分を合わせて全体を作ったとき、「合わせ方」に着目します。 例えば球面とドーナツ面(トーラス)は局所的にはどちらも2次元面ですが、全体としては違う形をしています。 表面に住んでいるアリには同じく見えますが、そのアリたちにも自分がどちらに住んでいるか調べることができます。 アリ1匹の両手に糸の両端を持たせて、そのアリが両端を持ったまま糸を引っ張って必ず糸全体を回収できるかを見ればいいです。

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図のように、球面上のアリは必ず糸を回収できますが、トーラス上のアリは柱を一周する糸は回収できません。

ここまで言うとどこが物理学と関係あるのか分からないものですが、実は現代の理論物理学の発展は幾何学とその軌を一にしてきたと言って過言ではありません。物理学で大前提とする「物理法則は観察者やものさしによらない」普遍性は、まさに幾何的です。そして実際、物理学の所々に幾何学が現れています。

その代表例として相対論やゲージ理論があります。一般相対論は時空間の構造自体と物理との対応を、ゲージ理論では内部対称構造と物理との対応を示唆しています。極端に還元主義的に言うと、物理法則は幾何構造の法則になるわけです。

班の性格について

歴代のPhysics Lab.では実験メインの班が多かったのですが、コロナ禍によりすべてのPhysics Lab.がオンライン公開になった年からは純粋理論・数理物理寄りの班が立ち始めました。私たちの幾何班もその一つです。

その結果、今回の他班を見ると

「量子物理班」「トポロジカル物性班」「生物物理班」「宇宙班」

のように、どちらも実際の現象に直接突き詰めていて、ほとんどは手軽に実験もできる分野である半面、幾何班は少し異質的な存在になっていますね。

ちなみにトポロジカル物性班とはネタが被っています。幾何班としてはスピン構造や重力、ゲージ理論などと言った物理理論の数学的構造にフォーカスを当てるようにして差別化を図っています。幾何班の内容でも実験ができないわけではないですが、2幾何学だけでなく物性の知識も要求されるので、それこそ学部生の実験としてはハードルが高すぎると判断しています。

実験は行わないので、色んなテーマを自主ゼミで勉強し、展示に向けては勉強した内容を活かして一般人向けのポスターや解説記事を作成する予定です。形式としては、一つのテーマに絞って学科の2年生と3年生が分担して丁寧めの記事を書くか、複数のテーマに分けてより多様な記事を書くかのどちらかですが、まだ未定です。

テーマ詳細

候補案のテーマの詳細を説明したいと思います。 急いで書いたので数式も充分ではなく、また余計に詳細になってしまいましたが、なんとなく雰囲気だけ感じていただければと思います。

古典力学、熱力学

実は幾何班が立ったきっかけになったのは「シンプレクティック幾何学の自主ゼミ」でした。 古典解析力学の一つであるハミルトン力学での状態空間は位置 x と運動量 p との対 (x,p) という座標系で表せて、かつ x,p を対とする特殊な構造(反対称2形式 \omega )を与えることができますが、その構造がある空間をシンプレクティック空間といい、シンプレクティック幾何学の対象になります。古典力学はそのシンプレクティック空間とその上の関数 H (ハミルトニアン)により完全に定まります。

シンプレクティック空間が定まれば、その空間の上の古典力学量子化して、量子力学を考えることができます。 これは量子化と言われるプロセスですが、シンプレクティック空間ならば位置・運動量からなる空間でなくても量子化することができます。これを幾何学量子化と言います。 スピンはよく「古典論での対応が存在しない」と誤解されていますが、実は回転する3次元球面を量子化することで得ることもできます。

熱力学でも、接触構造という形でシンプレクティック構造が登場します。例えば体積 V と圧力 p が、温度 Tエントロピー S が対応するらしいです。

スピン

先ほども言ったように、スピンは量子論的な概念で、古典論では登場しないというよく誤解されますが、実は古典論のコンテキストでも登場しています。

電子のようなスピン1/2はローレンツ群が作用する最小表現(カイラルスピノル)としても現れて、さらに反対カイラルのスピノル2つを合わせると時空上の「クリフォード代数」というものによって変換されるものが出てきます。このクリフォード代数はディラックのガンマ行列と呼ばれるものになっています。いずれも量子化待ちの古典論です。

ゲージ理論

ゲージ理論は時空間の各点に内部自由度を持つ場に関する理論で、重力以外の基本相互作用はすべてゲージ理論によって説明されています。3

要は、ある内部自由度が与えられたときに、その基準点は各点において任意に設定することができます。その内部自由度の基準点が決まったら、各点の周りで内部自由度の基準点の変化率が決まります。その基準点の変化率をゲージ場と呼びます。ここまでは、ゲージ場には「もとの点に戻ったら変化率はゼロ」という制約が付きます。

次に、ゲージ場からその制約を外します。(これをゲージ化と呼びます。) そしてそのゲージ場が独立な対象としてゲージ場の項を入れると、ゲージ場自体の運動方程式が得られます。 その方程式はなんと、\mathrm{U}(1) ゲージ理論ではマックスウェル方程式と一致します。 他の内部自由度、例えば \mathrm{SU}(N) という対称性に関する理論はヤン=ミルズ理論と呼ばれていて、その運動方程式もマックスウェル方程式にそっくりです。

電磁気学( \mathrm{U}(1) ゲージ理論 )においてこのゲージ場はスカラー \phiベクトルポテンシャル \bm A です。そして、場の量子論によるとこのゲージ場を量子化したものは光子です。古典的にはただの計算上の概念に過ぎなかった磁気ポテンシャル \bm A は、ゲージ理論ではこのように物理的本質になります。

重力理論(一般相対論)

時空の曲がり具合は、ベクトルの長さを表す計量 g, そしてベクトルを平行移動させたときどれだけ変化するかを表す接続 \Gamma によって決まります。いくつかの要請のもとで \Gammag に依存します。 一般相対論は、その g\Gamma を力学変数として重力を記述します。

一方、時間の曲がり具合を記述するには、多脚場と呼ばれるもう1つの方法があります。 各点で定義できる局所ローレンツe (多脚場)と、\Gamma と似た役割の \omega (スピン接続)で表現する方法です。 この e,\omega をもとに重力を記述する理論はカルタン重力と呼ばれます。

実は2つの表現は同等で、g,\Gammae,\omega で簡単に表せますが、その逆、つまり e,\omegag,\Gamma で表すことは(存在はするが)難しく、余分の自由度もできるので、多脚場の方が一般的に扱いやすい形になっています。

加えて、カルタン重力理論の強みは、スピンとの結合を表現できるところにあります。スピンは各点のローレンツ軸でしか表現できない構造になっているので、スピノル場のある重力理論を記述するにはカルタン重力が必要です。

それだけでなく、実はここで定義した \omega が多脚場 eローレンツ自由度におけるゲージ場になっていたり、その e をまた並進移動に対するゲージ場と解釈する立場もあったりします。 なお、重力がどのようにゲージ理論と関係しているかは、まだ明確ではありません。重力自体をゲージ理論として説明しようとする素朴な見解から、AdS/CFTから重力とゲージ理論の対応性が分かるという、もしくは散乱振幅上に重力がゲージ理論の二重コピーという理論まで様々な見解があります。

私個人的には二重コピー理論が面白そうに思いましたが、そこまで深入りするのは今はやめておきましょう。

それらと関係している何か

これらの理論が物理を説明する土台になることは間違いないですが、学部生のうちそれを勉強してさらにその内容を記事でまとめることになると、現実的に難しくなりますね。オチがあるところで切りたいし。

現在としては、アティヤ=シンガーの指数定理という定理を突き詰めてみようと思っています。 まだ勉強中ですが、この定理は多様体上で定義される微分方程式の解集合の特性を決定することに役立つらしいです。

余力があれば、指数定理がどのようにゲージ理論や重力理論、超対称性の解につながるかもやってみたいと思います。 もし目標の指数定理までたどり着けなかったとしても、そこまで勉強した記事のネタになるでしょう。(フラグ)

さいごに

偉そうに書いてはいましたが、恥ずかしながら班長の私はこれらの内容に関してはほぼ初心者です。 (少しでも背景知識があったら、もっとマシな記事が書けたと思います。また、以上の内容が不正確もしくは間違いがある可能性がありますので、ご了承ください。)

特に、これらの内容で本当の意味で物理をするためにはカオス系や場の量子論など膨大な理論を勉強しなければならず、班員ともに頑張ってはいるものの、タイトな学科授業と同時進行することの大変さをしみじみと感じています。現時点では、ただ数式の美しさを鑑賞するレベルにとどまっても上出来かな、と思います。

最近はトポロジカル絶縁体の発見により、物性のような身近な分野でもトポロジーの重要性が浮き彫りになっています(現に、Physics Lab.2022にはトポロジカル物性班が別途に立っています)が、勉強途中の学部生という面もあり、本班では数学的な記述にフォーカスを当てるようにしています。

ただ、初心者だからこそ初心者目線で解説記事が書けるのではないか、と私個人的には期待しています。 物理非専攻や高校生の方々にも、どうか楽しみにしていただけると幸いです。 至らない点は多々あるかと思いますが、Physics Lab.2022のこと、幾何班を何卒よろしくお願いします。

参考文献


  1. 実は、まったく意味がないわけではありません。例えば Anti-de Sitter空間と呼ばれる特殊な曲がった時空間は、「時間軸」をもう1つ加えて平坦な時空間として扱うことがしばしばあります。ただしその場合でも、もう1つの次元が物理的実体があるというより、あくまでも計算上のツールとして導入している印象ですね。なお、Anti-de Sitter空間は最近話題のAdS/CFT対応(Anti-de Sitter空間・共形場理論対応)で認知されています。

  2. 後述する指数定理も、超電導現象を用いて実験的検証ができるそうです。

  3. ただし、どのような内部自由度があるかは疑問の余地があります。電磁気と弱い相互作用は [tex:\mathrm{SU}(2)\times \mathrm{U}(1)Y] ゲージで表され、低温ではこの対称性が破れます。強い相互作用(色力学)は \mathrm{SU}(3) ゲージで表されます。それらを独立な自由度と見るのが標準模型、[tex:\mathrm{SU}(3) \times \mathrm{SU}(2)\times \mathrm{U}(1)Y] 相互作用ですが、最近は標準模型からずれている観測結果も発表されています。)